「導引」と「五禽戯」について、です。
現在の日本では「気功」の名称が比較的普及していますが、
これは中華人民共和国の設立後に広められた、意識呼吸法、内臓マッサージなどを含んだ2500年ほど継承されてきた運動と健康法理論の総称になります。
歴史的に記述された資料文献には「導引」の名称の方が古く使われ、
紀元前369〜286年「荘子・刻意編」の中には(紀元前200年頃の前漢時代の淮南子にも同じ内容の記述が出て来ます)
「吹呴呼吸、吐故納新、熊経鳥伸・・
此導引之士、養形之人、彭祖寿考者之所好也」
「かの導引術の士は、”養形の人”ともいわれ、中国の歴史的に有名な仙人ともいわれた”彭祖”が考え好むようなものである、方法としては、深く長く呼吸を行い、古い空気を常に体外へ排出し、新しく清々しい空気を体内に取り込み、熊の動作や鳥が首を長く伸ばしたりする動作を行っている」
の文に既に「導引」の文字が出てきます。
後に三国志時代の後に統一された「晋」の国となり、注釈が付けられて、その意味とは「導気令和、引体令柔」の二文字をとって
「導引」と呼ぶようになりました。
これは「呼吸法や身体に動作を通じて気を導くようにすれば和みの心持ちが得られる」
というように訳すことができます。
この方法は後の時代により多くの方面に影響を与え、
養生法、治療法だけにとどまらず、
武術(武功、武舞、武戯)ともいわれ、京劇のような戯劇、パフォーマンス的な舞踏などにも発展していきました。
<華陀>
導引の作用についてですが、華侘は更に陰陽五行論と五種類の動物の動作を取り込み「霊活性の高い動物(機敏で叡智のある生き物)」五禽戯「虎:腎臓の活性化:冬」「鹿:肝臓の活性化:春」「熊:脾臓・膵臓の活性化:土用」「猿:心臓の活性化:夏」「鳥:肺臓の活性化:秋」の運動として1800年前の三国志時代に総編しました。
そして人体の哲理は
「流れる水は腐らない、よく動く扉は虫がくわない」と例え
体内の血脈、血液やリンパの循環は、川の水のように、
流れをスムーズになるようにし、そして体の諸関節はよく動かせば
ドアの開閉が滑らかなように動くようになり、病は消える。
と、ひもときました。
そこから編み出された方法は、
引体:体を引き伸ばし関節をほぐす運動
導気:落ち着いて呼吸を整える方法
自己按摩:自分で体のコリを叩く、揉む、摩る
漱咽:唾液を飲み、口の中を舌で攪拌する掃除
存想:自分は何があっても大丈夫だ、としっかりと確信する
意念:イメージトレーニング
などがあります。
特に昨今の現代ストレス社会で重要なのは「意念」の訓練です。
つまりこれは「大脳トレーニング」になります。
活性化したいのは、
理解脳:会話やストーリーを理解できる脳感覚
観察脳:相手の表情や、その場の空気を読む能力
想像脳:物事の展開を予測し想像できる力
記憶脳:自らの経験を呼び起こし分析する力
選択脳:適切で必要な物事を選択する力、判断力
発声脳:声のトーン、大きさをコントロールする能力
本質的なすべての能力は「大脳」から発揮されており、
誰であっても人間は「その人」の「大脳」のはたらき具合で
全ての行動が決まっている、といえるでしょう。
ですから「意念」は、その行動を図るナビゲーションの役目を
果たしています。
そのまとまりを、私たちは通常、「意識」と呼び、
形にあらわれていないものを「無意識」と呼んでいます。
呼吸についても、普段の多くの方々は「無意識呼吸」が一般的です、呼吸法としての
意識呼吸動作方法だけでも、代表的なものでは、
瞑目存想(瞑想) 立式 意識呼吸法(腹式 胸式 逆腹式呼吸 4種 口〜口 口〜鼻 鼻〜口 鼻〜鼻)
養生十八法 呼吸八法(撮影した動画では時間の都合で2セットですが、左右6回3セットから左右8回4セットぐらいで効能が上がります)
ここで重要なことは古くから「鼻は肺の窓」といわれ、鼻の息の流れがスムーズであれば、疫病などの流行り病などの「肺機能障害」は予防できると歴史的な考察があります(体外へ排出させるためにバリアの役割を持つ体内においてで日々作られていく粘膜:津液:粘液、体液の質や量なども関係しています)
胸式:胸郭の広がりを意識した呼吸動作
腹式:横隔膜の広がりを意識した呼吸動作
逆腹式:腹式と逆に息を排出する時に横隔膜を下げる呼吸動作
推掌(掌で前方に押し出す手法3種)
(1、口〜口 2、口〜鼻 3、鼻〜口 4、鼻〜鼻)
正面
右腰から左方向
左腰から右方向
肘(腰法1種 腰から捻りを加え、肋骨(肋間筋)を動かしながら行う)
腿法(屈伸性腿法2種 足技と呼吸を合わせる)
伝統気功 華侘五禽戯13式
第57代伝人 薫文煥 老師
(農村で暮らし、五禽戯で近年に実証した名士です、享年91歳 この映像当時は87歳で私が研修で訪問した時は2007年で89歳で、とてもお元気でした。理論と技能共に素晴らしかったです)
今や世界的な傾向がありますが、衣食住が多種多様になり「体質の良好な基準感覚」を持てる方々は少なくなり、
生命力においての「人間力」まで弱めてしまったようでした。
これからも、長い眼で見れば、
様々な出来事が起こることが予測できますが、
自分の「気力」はあまり世相に振り回されることなく、
どんな時でもしっかりしていたいのです。
それをこれらの方法で実践していけば、
「無事:大事に至ること無く」
誰であっても、日々元気に頑張っていきたいと願うものです。
それでは皆様、
季節の移行期間は体調にも気持ち的にも影響が出やすいものですが、
是非、実践して乗り越えていただければ、と思います。
どうぞお元気にお過ごしください。