「健身」「修身」「防身」について
中国武術おける運動法則
「健身:体育運動 套路」
「修身:文化基礎 功法」
「防身:攻防技能 守衛」
「健身:丈夫な筋骨にする為の身体づくり」
「意識運動、呼吸運動、全身運動」
①意識運動:武術五元素、打つ、蹴る、関節技、体当たり、投げ受け身の技法で目的に合わせて大脳を駆使して動かす。
中国武術の特徴は「套路」のように定まった運動法則を最大活用し発展させてきたところも大きいです。
それは何の拳術でも器械でも套路運動の中で攻防技術を行っていく上で正しく伝統体育的な要素もある中国武術の「運動法則」に則って、修練:練習・練功を積むと「功夫:時間 能力 腕前」において各々に、それぞれに相応しく姿勢が正しく的確で、方法は明晰であり、身体の扱い方も変化に富み、手と眼は連動していて、精神力は一貫しており、勁力は正しく届き、呼吸法もうまく活かせてあり、リズムも滑らかでスムーズである、など これらが相互に連係し合って、相互作用が整って一体化(整体)していることが高手になり、洗練されていきます。
これをまとめていくと、
身型:姿勢 協調、勁力:技術方法・身体操作
精神:眼法・呼吸意識・力の大小、必要速度の緩急・リズム感覚があり、
これらの方法が極めて合理的で自身にまとめられるようになれることこそ「套路」運動の持つ役割であり、整合性が体得出来ます。
「姿勢」には空中姿勢や静止した時、暫定的に静かに動いている時のそれぞれに
相応しい、つまりは武術的に正しい身体状態のことをいいます。
「技術方法」には「武術五元素」での動作技術において、拳掌などで衝く、脚で蹴る、体当たり、投げる・受け身をとる、掴む。
器械武術では振り回す、叩きつける、刺す、斬る などの技撃方法があります。
ここでは攻防技法を行う時スピーディーかつ正確であり、意識が技と完全に結びついている状態が望ましいです。
「身体操作」は身法のことであり、伸、縮、呑、吐、閃、展、冲、撞などの中国武術特有のありとあらゆる全身の部分を使う身体操作方法のことでもあります。
これには上半身・下半身は緊密に結合していて、足を進めれば身体をそれに随い、身体が動き出せば、足の歩みもすぐさまに到達する。
腰法は身体の要でもある腰も技法に合わせて前屈やそらせたり、斜めに傾いたりを支えながら攻防に使います。
「眼法」は脳に近く、顔にある感覚器官の中で最も鋭敏な知覚を持っており、これを完全に制御できる方法が眼法です。
これには「手と眼が相し随い」を表すことであり「手眼相随」「手到眼到」という概念があり「眼」は精神、意識の表れるところだといいます。
「精神」は攻防・格闘の術に意識が集中しきっていられることです。
勇敢であり、機敏、沈着冷静、怖れはすべて無い、という心持ちの状態です。
「形」は何のために作られるか、というのはこの心持ちが「武術」になったということです。
そのことで「形神兼備:形と精神力を兼ね備られている」と表されています。
「勁力」は武術運動の中で重要視されるところで、それは「力」「意」「気」
が結合してきた一種の「活力:活き活きと動き出す力」のことを指します。
武術用語でいう「勁」とはこのことをいいます。
勁力は各々の技法によって剛柔があり、すべては内側から起こり外へと順達されていきます。そのことから「意気力を内三合」「身体の器官の制御では、両手首と両足首、両肘と両膝、両肩と両股関節の適合を外三合」これらを合わせての「内外合一」が重要となります。
②呼吸運動:動作において自発的な呼吸機能を合わせての肺活量を意識的に増大をさせられる。
「呼吸」は外に出す「呼気:息を吐く」であり、内に取り入れることが「吸気:息を吸う」これが呼吸のことです。
意識呼吸法の重要性は吸気:新鮮な酸素を充分に吸い 呼気:深く古くなった空気二酸化炭素を放出による、呼吸器官の強化、鼻や口からの息を意識して力強く、あるいは柔らかく通せるようになることで、空気の出入り口を確実に確保し、肺機能不全を起こす病気の原因となる「鼻づまり」や「痰が喉に停滞してからまない」ようにして良好な空気の通り道を良好に保ち意識的な自発維持ができる。
武術においては独特の規律があり、門派や動作によって特徴があります。それには深いもの、浅いもの、長いもの、短いもの、あるいは吸気・呼気において途中で暫定的に停止するものがあり、動作性質やリズムによって使い分けられています。
これには所謂「拳勢呼吸」といっており、その性質には「提気」「托気」「聚気」「沈気」があります。
③全身運動:両手、両足の四肢を武術意識に合わせた、質と量の高い全身運動による血液循環力の向上。
全身を動かす運動では武術動作では大きな特徴があり、これらをすべて合わせ「節奏:リズム」感覚で全身を動かす武術動作では大きな特徴があります。
これらには目的意識強化方法論として、古くは陰陽学説の中にある、相互矛盾しているようで相互連係していくことで生み出され動きによっては勇猛の攻勢をしかける時や、奇をてらい、あるいは身を潜めて留まったり、静かに動き様子を探る・・など 様々な状況変化に適応できる能力のことでもあり、最終的には意識は大脳、呼吸は肺機能、全身は心機能の活性化を図ります。
感覚的にも「動と静」「虚と実」「剛と柔」「疾と緩」があり、戦闘技法や美学など、そういった動物的闘争本能を人間が表すものといえます。
競賽:競技大会活動によるモチベーションとレベルアップで全体での向上感を高める。
「修身:伝統思想哲学による精神修養」
伝統武徳の意識
中国武術における精神修養は古く長き伝統思想や哲学に重きを置いた考え方で「武徳:武術道徳」として大きな影響を受け、その内容は儒教的徳性(規範)、道教的心性(自然)、仏教的解釈性(慈悲)の3つが融合させた文化感覚です。
伝統功法における意識的概念
・道家功法:道法自然、陰陽、五行変化、行気
・仏家功法:体悟、宇宙与自心、唱虚静、通過座禅、参禅、瞑想、除雑念、浄心身、人生的悟解
天台:止観
禅:禅正
密:ヨガ 三密「身密・手に諸尊の印契(印相)を結ぶ」「口密(語密)・口に真言を読誦する」、「心密・心に曼荼羅の諸尊を観想する」
・儒家功法:規範、練心 「正」「直」「養気」その性質としては五常の精神「仁」「義」「礼」「智」「信」「勇」の道徳精神に集約されています。
意 「意識的概念」
正 「身与意」 一致 返先天 穏秩序
静 畜気 聚能 静中行気 陰陽相合
松 外形要松 空山無人 水流花開
息 調形 調息 調心 性命圭旨
空 性命双修 恬淡虚無 真之気 無極生太極
順 随 上下合随 前後相随 内外相随 身歩相随 不追求 不強制 不則易
導 得 流水不腐 戸枢不蠢
観 観想 清風洗心 観心 如明月在懐
抱 見素抱朴 精気神 「神抱」「意抱」
守 意守丹田 意到則気到
正 「身与意」 一致 返先天 穏秩序
「正:ただす」
身と意の一致
穏やかに秩序と道理が整っている。
静 畜気 聚能 静中行気 陰陽相合
「静:しずけさ」
気を蓄え、聚能する。
静かな中に気を巡らせ 陰陽を相い合わせる。
松 外形要松 空山無人 水流花開
「松:しょう」
外形は松の樹木の姿のような力を保持するのがよく、
落ち着いたさまは、空や山に人が無く 水は流れ 花開く、ような心地である。
息 調形 調息 調心 性命圭旨
「息:いき」
形を調え 息(呼気吸気)を調え 心を調える。
空 性命双修 恬淡虚無 真之気 無極生太極
「空:くう」
自らの生まれた性と命の相い修められ、恬淡:気持ちはおおらかに、虚無:執着心はない状態、そこから無極から太極が生じる。
順 随 上下合随 前後相随 内外相随 身歩相随 不追求 不強制 不則易
「順:じゅん・ずる」
随(したがう)
上下が相い随い 前後に相い随い 内と外が相い随い 身と歩が相い随う”不追求” ”不強制” ”不則易”
導 得 流水不腐 戸枢不蠢
「導:みちび・く」
得(える)
流れる水は腐らず よく動く扉には虫は食わない。
観 観想 清風洗心 観心 如明月在懐
「観:かん・じる」
観想(想いを観じる)清らかな風に吹かれ心を洗う。
「観心(心を観じる)明るい満月の温かみを懐に抱く。
抱 見素抱朴 精気神 「神抱」「意抱」
「抱:いだく」
素と朴(素朴さ)を大事にする。
神抱 意抱 神を抱き 意を抱く。 精・気・神。
その例えは、ありのままの姿の手付かずの自然の樹木を抱くような心地である。
守 意守丹田 意到則気到
「守:まもる」
意守丹田
上中下の丹田に集中力を向け、外界を退け 心が落ち着けば 内意が動き出し 内気に至る。
練功を重ねていくうえで「意:おもい」は自然発生的に感じられるようになります。
それは内外相修と呼ばれ、「内外相修:わざのすべては内(心)から、出て外へかたちとなって表れ、その外へ出たかたちはまた内(心)へ還る」
「防身:防衛、守衛の実践」
攻防動作:護身術の実践、間合いを知り、守衛の感覚の理解、防御、節制の為の攻撃。
武術五元素における攻防で、方向性、角度、力の大小の調節感覚。
予防医学における生活習慣病の予防意識を持ち、実践を行い、心身の安定感を堅持する。
こういった武術知性、武術技芸を備えていくうちに、自身には「文武精神(文武両道)」の意識が芽生えます。
従って、伝統ある中国武術運動は「健身 修身 防身」の概念のうえに「体育運動」過「文化基礎」「攻防動作」の方法が具体的にしっかりとした基盤の上に身に着き、”不老長生の術”行える者として”中国武術人士”へと自ずから昇華されていくようになります。
日々の、武術修養は常々に健全な心身を構築できる、素晴らしい歴史文化です、共に頑張って精進していきましょう。